子孫の広がりは不確定だが,先祖をたどると必ず2倍ずつ増えていく。これを100年以上たどるとなると古文書や家系
図が残っている名家や大地主でなければ正確な過去は探れない。
我々のような一般人にとって先祖の事跡を調べるとしても,せいぜい3代前ほどのことである。我が家も3代前の明治
の初め頃までは口移しである程度はわかるのであるが,家系図などという上等なものなどはなく,江戸時代の村方文 書を見ても一族の名前が載ることは,あり得るはずがなかった。
新井男と浦安女
そこで,直系の先祖だけではなく,一族郎党まで範囲を広げると,ここに書く事柄もいくつか浮かんできた。まずほとん
ど記録に残っていない母方の家系であるが,母は,浦安堀江の専業漁師の長女である,父は新井の生まれなので「新 井おとこに,浦安おんな」である。新井の男は真面目で,浦安の女は働き者で器量がよいとのことだが両親を見ている と,そんなに相性はよくないのではないかと思われる。
宇田川家(母方の系譜)
母の実家を継いでいる伯父の話ではご先祖様は,明治の初め頃,東京の佃島から浦安に移り住んだそうで,名字は
浦安はもとより葛南・葛西で一番多いと思われる姓「宇田川」である。浦安に移り住んだ頃は「吉川」を名乗っており,こ の姓は現在,母の弟が継いでいる。なぜ吉川が宇田川になったのか今は誰も知らないようである。
母方の祖母は湊新田の生まれで,どういう訳か二度,夫に先立たれ,三度目の結婚で宇田川家に入った。母は六人
兄弟で異父兄弟が二人いる。祖母は30代で亡くなったが,写真を見るとかなり立派な体格で,湊新田の家では村相撲 の大関が出たそうである。私を含め母方のいとこはみんな体格が良い。
宇田川家は代々専業漁師だった。昭和46年の漁業権の全面放棄で浦安の漁師は皆陸に上がった。全面放棄なの
で保証金はかなりの額になったようだ。しっかりと家を建てたものや,あっという間に使ってしまったものもいて,色々だ ったようだ。宇田川家は元漁師限定で海楽に土地を手に入れ保証金で立派な家を建てた。ひいじいさんの頃からの苦 労が漁師をやめてから実を結ぶという皮肉な結果となった。
浦安の専業漁師はほとんどが借家住まいで,揃ってぎりぎりの貧乏暮らしだったようだ。一方江戸時代からの住人は
江戸川が運んだ土砂によって海にむかって広がった土地を開墾しかなりの水田を持っていた,半農半漁とはいえ,収 入面でかなり恵まれていた。
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